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徹底解説:従量課金制ガイド

従量課金制とは何ですか?
なぜ従量課金制なのか?
従量課金制は、特に新たな生成AIオファーを開発・提供する企業を中心に、業界を問わず急速に主流の価格モデルとして採用されています。これは、コンサンプション(従量課金)モデルが顧客の価値に沿った価格設定や、その価値の明確な提示を可能にするためです。
Subscribed Instituteの調査によると、急成長中の多くのSaaS企業がコンサンプション(従量課金)モデルを活用しています。実際、従量課金制を何らかの形で採用している企業の割合は、2020年から2022年の間に9%から26%へと増加しました。

なぜコンサンプション(従量課金)モデルはこれほど人気なのでしょうか?
従量課金制は競争上の差別化要因となり得るほか、販売コストの削減や参入障壁の低減にも寄与します。また、ハイブリッドモデルの一部として従量課金制を活用することで、企業規模を問わず、年間経常収益(ARR)の対前年成長率が向上することが示されています。
顧客は、投資対効果(ROI)の明確化や初期リスクの低減をますます求めており、自社がどれだけ製品を利用し、どれほどの価値を得られるのかを把握したいと考えています。実際、顧客の80%が、従量課金制は受け取る価値との整合性が高いと回答しています。
顧客は、初めて製品を試す際には柔軟性を重視するため、シンプルな従量課金制は新規顧客のオンボーディングに適した選択肢となります。しかし、製品の利用が進み、顧客が貴社のソリューションに自信を持つようになると、より高い予測可能性を求めるようになります。そのため、顧客との関係が深まるにつれて、製品の利用方法に応じた課金方法も変化することが期待されます。結果として、貴社のマネタイズ機能も顧客の期待に応じて柔軟に対応できる体制が求められます。
従量課金制の導入方法
新しい製品を追加する場合でも、新たに従量課金型のビジネスモデルを導入する場合でも、競合他社に先んじて迅速に行動を起こす必要があることは明らかです。しかし、データの整理は困難であり、価格設定の実験には時間がかかり、複数の価格モデルをどのように組み合わせるべきか判断がつかないこともあります。
本章では、従量課金制が貴社の製品、顧客、ビジネスに適しているかどうかを判断するためのステップをご案内します。
コンサンプション(従量課金)モデルが最適な選択かどうか、どのように判断できますか?
従量課金制を導入する際には、継続的な成長を実現するために「企業および製品」「ユースケース」「価格モデル」という3つの重要な要素を考慮する必要があります。
企業と製品
従量課金型ビジネスモデルは、成長を促進する強力な手段となり得ますが、リスクや投資に対する懸念から導入をためらう企業も存在します。必要な機能を構築し、適切な状況で導入することが重要です。以下の要素を検討してください。
- テックスタック: 柔軟な利用に対して、全体のテクノロジースタックはどのように整合していますか?Infrastructure as a Service(IaaS)やPlatform as a Service(PaaS)企業でAWSスタックを活用している場合、柔軟な利用が重要となり、コンサンプション(従量課金)モデルが非常に適合します。AWS EC2、Snowflake、Fivetranは、柔軟な利用において相互補完的かつ整合している3つの異なるテクノロジーサービスの例です。
- プロダクト主導成長(PLG) vs. セールス主導成長: 純粋なコンサンプション(従量課金)モデルは、プロダクト主導成長と特に相性が良く、新たな契約を販売せずとも自然に拡大します。セールス主導のパラダイムでも従量課金制は活用できますが、コミットメント型の支出やハイブリッド型契約の方が適している場合が多いです。
- 固定コスト vs. 変動コスト: 売上原価(COGS)が予測しやすく、利用パターンが安定している製品には、ユーザー単位の定額サブスクリプションモデルが適しているでしょう。一方で、消費量の変動やコストが大きく変動する製品(例:多くの生成AIユースケース)には、従量課金型、成果報酬型、またはハイブリッドモデルの方が適しています。
ユースケース
当社のデータ分析から得られた重要な洞察として、従量課金制の導入の多くは、実際には従量課金と定期課金を組み合わせたハイブリッドモデルで実施されていることが明らかになりました。導入に成功している企業は、提供する価値やメリットとより整合するユースケースをターゲットにする傾向があります。
コンサンプション(従量課金)モデルがより適している代表的なユースケースの一例は以下の通りです。
- 需要が急増・急減するプロファイル(例:特定のアナリティクスワークロード、Snowflakeなど)で、予測可能性よりも柔軟性が重視される場合。
- 季節変動のあるビジネスおよび業界分野(例:ホリデーシーズンの小売テクノロジー、確定申告時期の会計士など)。
- トークン消費量が変動する生成AIツール。
価格モデル
コンサンプション(従量課金)モデルを計画する際には、どのような価格設定オプションがあるのかを把握しておくことが重要です。戦略を最適化する過程で組み合わせて利用できる代表的なオプションをいくつかご紹介します。
- 純粋な従量課金: 「使った分だけ支払う」コンサンプション(従量課金)モデルは顧客に最大の柔軟性を提供し、製品を利用しなかった月は支払いがゼロになる場合もあります。
- 超過料金: このモデルでは、顧客に請求期間ごとに一定数量の単位が提供され、それを超えた分は超過単価に基づいて課金されます。
- 最低コミットメント: このモデルでは、顧客が利用量にかかわらず、各請求書ごとにコミットした金額が請求されます。
- ハイブリッド消費型: サブスクリプション型と従量課金型の両方を組み合わせて、単一のサービスで提供するアプローチです。
関連リソース
コンサンプション(従量課金)モデルがビジネスの成功に貢献する方法
従量課金型価格モデルを導入・拡大するための実証済みの戦略とツールをご紹介します。当社の調査によれば、ハイブリッドモデルを活用しているSaaS企業は、継続的な成長において他のすべてのビジネスを凌駕しています。
コンサンプション(従量課金)モデルをどのように導入すべきか?
従量課金制のメリットや、貴社に最適なモデルやその組み合わせの選び方が分かったところで、次は「いかに迅速に従量課金価格を導入するか」、そして「どのような機能が必要か」についてご案内します。
コンサンプション(従量課金)モデルを成功に導くために必要な主要な4つの機能は以下の通りです。
1. 開発者の手を介さず価格設定ができること
- ノーコード価格設定ツール:豊富な開発リソースを必要とせずに、価格モデルの変更や価格ポイントの調整が可能。
- 自動価格更新:価格の変更が、アプリ内課金やeコマースプラットフォーム、CPQシステムなど全システムに反映されることを保証。
- データに基づくバリューメトリクス:すべての製品に対して収益化できるメーターを迅速に追跡・定義可能。
2. 多様な価格戦略で実験できること
- モデルの組み合わせを試す:ボリューム、階層型、マルチアトリビュート、従量課金(使った分だけ支払い)など、さまざまな顧客ニーズに対応できるオプションを含める。
- プリペイドクレジットとチャージ:顧客が予算管理しやすいよう、前払いでクレジットを購入し、必要に応じて利用できる仕組みを提供。
- 割引・トライアル:新規ユーザー獲得や利用促進のためのプロモーション価格や無料トライアルを導入。
3. 利用データの収集・測定・追跡
- 自動メディエーション:利用データの集約・処理を効率的に管理し、さまざまなソースからのデータを正規化し、請求に正確に反映できるようにする。
- スケーラビリティと統合性:利用データを請求システムとシームレスに統合し、大量データもパフォーマンスを維持しつつ対応可能。
- 動的データ統合:複数ソースから利用データをストリーミングし、自動でデータの拡充・集約・重複排除を行う。
4. 成長のための分析と最適化
- リアルタイム分析:利用パターンを継続的にモニタリング・分析し、顧客行動を把握してサービス内容を柔軟に調整。
- コスト・収益追跡:各価格プランごとにコストと収益を比較し、最も収益性の高い戦略を特定。
- 実験:同じ利用データに異なる価格プランを適用し、収益最大化や顧客満足度向上につながるものを見出す。
- 部門横断的な導入:営業や収益会計チームなど、複数のステークホルダーと連携・計画し、全社で新たな価格設定を円滑に展開。
利用メディエーションとは何ですか?
利用メディエーションは、すべての利用イベントに内在する情報を最大限に引き出すために、顧客の利用データを統合・計測・追跡する役割を果たします。顧客が実際にどのように製品やサービスを利用しているかについて、正確かつタイムリーなデータを得ることは、従量課金価格や請求戦略を最適化するうえで不可欠です。
従量課金制の導入を始めたばかりの多くの企業は、価格プランの選定・実装(レーティング)から着手しがちです。しかし、価格設定やパッケージングを最適化する前に、まず顧客やその消費パターンを包括的に理解することが重要です。これは、メディエーションを通じて顧客の利用データを収集・計測することで実現できます。
カスタマイズされたソリューションやアドオンで請求システムに利用データの取り込みや計測機能を追加することも可能ですが、多くの企業にとって最も効率的かつコスト効果の高い選択肢は、すべての利用データ要件に対応し、既存の請求・収益認識システムと統合できる専用のメディエーションエンジンです。
メディエーションエンジンとは何ですか?
家庭の電力量計(メーター)が電力使用量を測定し、請求可能なキロワット時(kWh)に変換するのと同様に、メディエーションエンジンはあらかじめ定義された利用価値指標ごとに利用状況を測定・計量します。貴社にとっての利用価値指標は、kWhの代わりにストレージ容量(GB)や通話時間(分)などになる場合がありますが、基本的な考え方は同じです。
しかし、利用データやメディエーションのプロセスは、それ以上の幅広い用途で活用できますし、活用すべきです。従量課金戦略を用いて継続的な成長を実現するには、クロスセルやアップセルの機会、コスト削減施策など、実際に活用できるインサイトを抽出できることが重要です。顧客がいつ、どこで、なぜ、どのように製品を利用しているのかをより深く理解できれば、オファリングや価格設定、製品自体を最適化することが可能になります。
従量課金制を導入している多くの企業は、どのようなメディエーションソリューションを選択すべきか分からない、あるいはその必要性自体にまだ気づいていないことがよくあります。R&D部門やIT部門が独自のメディエーションツールなど、カスタムソリューションの構築・保守を担わされるケースも多く見受けられます。
また、アドオン製品やETL(Extract, Transform, Load)ツールを選択する場合もありますが、最終的にはこれらのソリューションが多大な開発リソースを必要とし、コスト増加につながることが判明する企業が少なくありません。
一方、メディエーションエンジンであれば、利用データの収集・変換・計測・追跡に必要なすべてのツールを提供します。プロダクトマネージャーに対しても、純粋な従量課金制からハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルまで、リアルタイムで柔軟に価格戦略を転換できる可視性をもたらします。
従量課金制価格戦略の一環として、メディエーションエンジンは、顧客が必要なタイミングで必要な分だけ消費できる柔軟性と、自身の利用状況や料金を常に把握できる透明性の両方を実現するための基盤となります。

利用データの取り込みと保存
メディエーションを開始するには、すべての関連ソースから利用データを収集する必要があります。これには、ユーザーの操作データ、システムログ、センサー情報、その他のソースが含まれる場合があります。
メディエーションソリューションがない場合、貴社のITチームが製品から発生するすべての利用データの管理、ルーティング、クレンジングを担うことになります。数千件におよぶイベントをデータウェアハウスに集約した後、データを分析・変換し、活用できる状態にしなければなりません。
メディエーションエンジンを活用すれば、APIやバッチアップロードを通じて、複数のソースからほぼリアルタイムで利用データを自動的にストリーミングできます。利用イベントを大量(最大約20万件)に処理できるソリューションを選ぶことで、ピーク時の需要にも対応できます。
さらに、集約・保存のために専用のメディエーションエンジンを利用することで、利用データの管理性・アクセス性・セキュリティが大幅に向上します。加えて、別途データウェアハウスを用意する必要がなくなるため、不要なストレージコストの削減にもつながります。
利用データの変換
利用データの変換は、生データや非構造化データを、分析・計測・レーティング・請求・収益認識に適した形式へと変換するための重要なステップです。このプロセスでは、まず生の利用データから不整合や重複、不要なデータや外れ値を除去し、クレンジングを行います。
次に、データフォーマットを標準化し、自社のユースケースに合わせた変換を適用します。たとえば、主要な利用価値指標が「使用ストレージ容量(GB)」であれば、すべての関連データがこの単位で表現されていることを確認する必要があります。これにより、データセット全体の一貫性が確保され、複数の事業部門でのデータ活用性も向上します。
メディエーションエンジンはデータ変換にどのように役立ちますか?
データ変換は、自社開発のメディエーションツールやETLで実施すると、非常に手間がかかり、ミスも発生しやすいプロセスです。専用のメディエーションソリューションを導入することで、利用データの新たなソースを迅速かつ標準フォーマットで取り込むことができ、請求・収益認識部門でも容易に活用できます。自動で重複排除、変換、検証が行える機能を備えたソリューションを選ぶことで、データチームの負担を大幅に軽減することができます。
利用データのメータリング
利用データを集約・変換した後は、「メータリング」と呼ばれるプロセスで計測を行う必要があります。そのためには、顧客データを分析し、貴社の製品やサービスにとって適切な指標を決定することが必要です。これらは、顧客への課金に利用するパラメータや属性となります。コンサンプション(従量課金)モデルを採用する場合、特に重要な利用価値指標を特定し、計測することが求められます。
これらの主要指標は、単に自社で追跡可能な利用属性であるだけでなく、顧客価値との整合性を持ち、将来的な成長の余地を残し、顧客と事業双方にとって予測可能性をもたらす必要があります。調査によれば、利用量と定期収益の双方に基づく指標を持ったハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルを採用している企業は、年間経常収益(ARR)の前年比成長率において他の企業を大きく上回っています。
既にETLツールを導入している企業では、それを利用してメータリングを行うケースもありますが、ETLツールはバッチ処理しか対応できないため、開発者によるカスタマイズや保守が不可欠です。新たなオファリングの追加時には、メータリング要件が市場投入までの時間を遅らせる要因にもなり得ます。
収益認識にも影響が及びます。適切なメータリングや利用データの計測が行われていなかったり、会計部門で即時活用できるデータ形式になっていない場合、収益認識プロセスが遅延し、事業の成長に悪影響を及ぼします。
メディエーションエンジンは、メータリングや主要指標の特定にどのように役立ちますか?
メディエーションエンジンは、顧客の利用に関連するデータの収集・集約・分析・モニタリングを支援します。このデータドリブンなアプローチにより、価格モデルに最も適した指標を判断できるため、顧客の行動や価値に合わせた価格設定を実現できます。
価格設定を決定するための属性が多いほど、顧客に最適なオファリングを構築することが可能になります。ドラッグ&ドロップ機能を備えたソリューションを選択すれば、最適な指標の組み合わせも迅速かつ容易に設定できます。

ヒント
最適な指標の見つけ方
一般的な指標には、ユーザー数、消費データ量、イベント数などがあります。
最適な利用価値指標を決定する際は、以下の属性を考慮してください。
- 価値ベース: 顧客にとって価値の交換が明確であること。この指標が多く利用されるほど、顧客にとっての価値も高まります。
- 測定可能: 指標を正確に追跡・計測できること。測定できないものに対して課金することはできません。
- コントロール可能: 利用に応じて課金する場合、顧客が自らコントロールできる感覚が重要です。顧客の請求額が外部要因に左右されるような設定は避けましょう。
利用データの追跡
これらすべてのステップを連携させ、価格設定やパッケージングを継続的に改善するためには、データ収集から収益認識まで利用データを追跡できるシステムが必要です。
信頼できる利用データの追跡・保存システムは、顧客からの異議申し立て対応時にも不可欠です。自社開発やアドオン、ETLソリューションでメディエーションを行っている場合、利用データが監査や証拠として十分でないことがあり、顧客からの請求に関する問い合わせに対し、詳細な利用データを提示するのに数週間かかる場合もあります。
顧客はリアルタイムの利用状況の可視化を重視しており、日々の進捗確認や超過予測、請求内容の把握を求めています。利用データの追跡により、しきい値通知の配信や顧客自身による支出管理が可能となり、顧客満足度も向上します。また、利用予測機能により、利用頻度の高い顧客の行動を分析し、事業拡大の機会を予測することもできます。
メディエーションエンジンは利用データの追跡にどのように役立ちますか?
サービスの利用量、利用者、利用時期などの属性を自動で追跡・レポートできるシステムを選択しましょう。メディエーションエンジンは、関連するシステムや部門間でデータが流れる過程を追跡し、事業者と顧客の双方に対して透明性を高めます。
コンサンプション(従量課金)モデルの価格設定とパッケージング
コンサンプション(従量課金)モデルは、価格設定とパッケージングの両面から構築されています。価格設定は価格ポイントや価格モデルを指し、パッケージングは機能をどのように組み合わせて提供するかを意味します。これらを組み合わせることで、顧客が期待する価値と柔軟性、そして企業にとって必要な予測可能性や戦略性を実現できます。
ここでは、価格設定とパッケージングの両面についてさらに深掘りし、コンサンプション(従量課金)モデルの基盤となる仕組みを理解していきます。
明確な価格戦略は必須要件
従量課金制の価格設定は、純粋な消費型ビジネスモデルの中核となる要素です。提供者は、顧客がどれだけ製品を利用したかを測定できなければ、効果的な請求を行うことができません。この考え方は「バリューメトリクス」「単位」「価格設定の基準」などと呼ばれることがあります。
バリューメトリクスとは、企業が追跡可能で、顧客価値と整合し、成長の余地があり、顧客・企業双方に予測可能性をもたらす利用属性のことです。一般的な指標としては、ユーザー数、消費データ量、イベント数など、価値ベース・測定可能・コントロール可能なものが挙げられます。
バリューメトリクスを選定した後は、利用単位ごとの価格(レーティングロジック)を決定します。これは、利用1回ごとの定額料金(例:APIコール)から、コンピュートとストレージの組み合わせのような多次元アルゴリズムまで、シンプルなものから複雑なものまで幅広く設定可能です。
もう一つ重要な価格設定要素が「タイミング」です。すなわち、顧客が製品利用に対していつ支払いを約束するかという点です。最も成功している企業の多くは、総収益のうちコンサンプション(従量課金)モデルが占める割合が25%未満にとどまっています。こうした企業は、まずバリューメトリクスを基準に価格設定を行い、リスクの低い従量課金型(Pay-as-you-go)と予測性の高い前払いモデルを組み合わせて継続的な成長を実現しています。
一般的な従量課金価格モデルにはどのようなものがありますか?
従量課金価格には、すべてに当てはまる「万能モデル」は存在しません。当社データが示す通り、成長を最大化するには、全体的な従量課金型ビジネスモデルの中で最適な従量課金比率を見極める必要があります。継続的な収益成長を実現するためには、複数のモデルを組み合わせたハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルの導入を検討してください。
ここでは最も一般的な価格モデルをご紹介します。
単位ごと(従量課金型/Pay-as-you-go)
純粋なコンサンプション(従量課金)モデルで、顧客は利用した分だけ支払います。ニーズが予測しにくい顧客には有力な選択肢であり、利用量の急増やそれに伴うコストにも柔軟に対応できます。顧客が必要な分だけ消費できる最大の柔軟性を提供します。Chariotのような乗車ごとのサービスや、Amazon Web ServicesのAPIごと課金が好例です。
ボリューム型
購入ボリュームに応じて価格を設定するモデルです。SaaSのAPIコールなど、特定のユースケースで特に有効です。例えば1〜1,000回のAPIコールは1回あたり$0.10、1,001〜10,000回は1回あたり$0.15など。単価が下がることで、顧客の利用促進を図れます。
階層型(ティア型/ステップ価格)
利用ボリュームが増加するに従い、段階的に価格が変わるモデルです。ボリューム型に似ていますが、階層ごとに異なる単価が適用され、各階層の消費単位ごとに価格が異なります。
超過課金型
一定量の利用単位(例:通話の月間分数など)が含まれており、それを超過した分は超過分の単価で課金されます。
階層型+超過課金
階層型課金モデルに加え、最上位階層を超えた利用分に超過料金が発生するモデルです。
マルチアトリビュート型
複数の指標による課金モデルです。例えばZipcarの場合、時間帯、車種、曜日など複数の属性を組み合わせて課金します。
プリペイド型(前払い消化)
一定量の単位を前払いし、利用の都度消化していくモデルです。顧客はあらかじめ金額を決めて利用でき、企業側は収益予測性を確保できます。
最低コミットメント型
顧客がコミットした利用量に対して請求するモデルです。たとえ実際の利用がコミット量に満たなくても、コミットレベルでの請求が発生し、企業側は収益予測性を維持できます。
ハイブリッド消費型
最近では、予測可能なサブスクリプションモデルと変動性の高いコンサンプション(従量課金)モデルを組み合わせたハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルが、継続的な収益成長の推進役として注目されています。
SaaS業界では、これらの価格設定・パッケージング戦略の最適化が進行中ですが、コンサンプション(従量課金)モデル導入していないモデルと比べても良好な結果が出つつあります。
純粋な従量課金収益は予測が難しく変動性も高いですが、ハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルは特にクラウドサービスや生成AIをはじめとするSaaSに適している場合が多いです。これらのハイブリッド型・機動的なモデルは、予測可能性を維持しつつ、価格や支払いを実際の利用・需要により密接に連動させることで顧客価値も向上します。
実験文化の醸成
近年、価格設定とパッケージングに関する業界の議論において、「実験」という重要な視点が加わりました。誰もが「自社の価格設定は完璧だ」と言いたいところですが、実際には多くの企業が常に試行錯誤を重ね、「ここで何ができるだろう?」「あちらではどうだろう?」「顧客は本当に価値を受け取っているのか?」「その価値を最大限に活かせているか?」「顧客は支払額に満足しているか?」「最後に価格を見直したのはいつか?」「競合他社と比べてどうか?」といった問いを繰り返しています。
これらの問いは、貴社と顧客双方にとって最適な組み合わせやアプローチを発見するために、価格設定やパッケージングに関する実験を構築するうえでの優れた出発点となります。
また、組み合わせ自由な価格設定やパッケージングで迅速な実験を可能にするテクノロジーの導入には、経営層の理解・承認も不可欠であり、部門横断的な協働を後押しするリーダーシップも求められます。
オファーの可視化は、価格設定・パッケージングに関する実験の一例です。従来は主にメディア業界で活用されてきました(例:新聞社のサイトで一定回数記事を閲覧した後にペイウォールに到達するなど)。しかし、SaaSビジネスでも同様の戦略が存在し、たとえば無料トライアルから有料サブスクリプションや上位サービスへの転換を図るケースなどが挙げられます。
動的なオファー提示は、収益増加や顧客サービス向上に寄与する価格設定・パッケージング実験の手法のひとつに過ぎません。
実験におけるベストプラクティス
価格設定やパッケージングの実験は、多くの企業が従量課金型価格設定をより効果的に行う上で役立っています。継続的な微調整がどのようなものか、一例をご紹介します。
- 頻繁な実験: 「昨年これをやったから」という固定観念を捨て、できるだけ頻繁にイテレーションを重ねる姿勢を持ちましょう。
- テストの実施: スプリットテスト(A/Bテストとも呼ばれます)で複数バージョンを用意し、コンバージョン率などの指標で評価しながらデータから学びましょう。
- モデルバリエーションの試行: まずはシンプルな従量課金から始め、徐々に階層型などより複雑なモデルへと発展させていきましょう。
- 具体的な戦術の活用: 貴社のバリュー実現の段階に応じて、戦略的かつ具体的な実験を計画しましょう。
- 顧客視点の重視: カスタマーサポートや請求担当部門から寄せられる、オファーの価値に関する顧客の声に耳を傾けましょう。

ヒント
従量課金ビジネス成功のためのツール
経理・財務の視点で見る従量課金
コンサンプション(従量課金)モデルは特定のサービスに非常に適していますが、「万能の解決策」ではありません。そして、多くの顧客も同様にそのように捉えています。初めてコンサンプション(従量課金)モデルの導入を検討する場合は、慎重なアプローチが重要です。
CFOは、従量課金価格の多面的な性質を理解したうえで、自社に最適かどうか、また最適である場合には、どのような戦略・コミュニケーション・組織的合意が成功に必要かを見極める必要があります。
そこで、従量課金導入を検討する際にチェックすべき主な質問をまとめたチェックリストをご用意しました。これらの質問は、従量課金が貴社に適しているかどうか、そして成功裏に運用するために何を知っておくべきかを判断する助けとなります。
どのような顧客データを保有しており、それを活用して顧客の利用状況を予測できますか?
従量課金価格の基盤は顧客の利用データです。完全かつ正確、そしてタイムリーな利用データが必要であり、そのデータが信頼性・監査性・証拠性のある形でレーティングや請求に用いられることが求められます。不明確な利用内容が含まれた高額請求書は、請求業務、サポート、営業部門の多くの時間を一気に消費してしまうことになります。
正確な予測を支えるためにも、クリーンなデータが重要です。コンサンプション(従量課金)モデルはその性質上、従来のサブスクリプションモデルよりも予測が難しくなりますが、その分、正確な予測の重要性も高まります。
例えば、SaaSライセンスを年間契約で提供している場合、顧客の利用量にかかわらず1年間の収益を見込むことができます。一方で、コンサンプション(従量課金)モデルでは、収益が毎月、毎日、さらには毎分単位で変動する可能性があります。
コンサンプション(従量課金)モデルを管掌するCFOにとって、利用パターンを把握し正確な予測を行うことは最優先事項となります。
クリーンな利用データがなければ、コンサンプション(従量課金)モデルのすべてが格段に困難になります。APIコール、送信メール数、アプリケーション内のタスク数、ファイルのアップロード数、ログイン回数など、顧客利用データの把握とインサイトの抽出は、従量課金導入を検討するCFOが最初に注力すべき領域です。
また、従量課金の予測は、収益認識においても独自の課題をもたらします。例えば、FP&Aや営業オペレーション部門が、ASC606が求める収益処理を考慮せずに独自の利用予測を行ってしまうと、事業全体の予測値に大きな乖離が生じることがあります。

ヒント
データを最大限に活用する
アナリティクスチームと連携し、利用データを統合・分析してトレンドを把握し、利用価値指標の選定に役立てましょう。すべての利用データ管理ニーズをカバーし、既存の請求・収益認識システムと連携できる専用メディエーションエンジンの導入も検討してください。
利用予測の精度を高めるためには、CFOが組織内の部門横断的な協働や新規ユースケースに対する事業方針の整合を促進することが重要です。
貴社のテクノロジーは、複数のモデルに対応し、変化する顧客ニーズに十分柔軟に対応できますか?
コンサンプション(従量課金)モデルは、プロダクト主導成長の観点で特に効果を発揮します。純粋な「使った分だけ支払い」モデルは顧客にとってリスクを低減し、製品を気軽に試してもらえるため、顧客獲得率の向上や獲得コストの低減にもつながります。
理想的には、顧客の利用が進み、コストが顧客事業にとって無視できない水準に達するタイミングが訪れます。この消費ライフサイクルの段階では、リアルタイム計測・レーティングによる通知と、より予測可能な契約条件や価格モデルの提供という2つの要素が極めて重要になります。
リアルタイムのメータリングとレーティング
従量課金価格を長期的に運用するには、リアルタイムで利用量をレーティングし、しきい値通知を提供できるシステムが不可欠です。顧客が予想外の高額請求に驚かされることほど、悪い顧客体験はありません。
顧客に可能な限りリアルタイムでコストの透明性を提供することは常に不可欠です。優れた企業は、セルフサービスポータルの提供、しきい値通知の自動発信、現場チームへのデータツール支給など、複数の側面からこの課題に取り組んでいます。
カスタマイズやアドオンのソリューションで請求システムにデータ取り込みやメータリング、レーティング機能を追加することも可能ですが、多くの企業にとって最も効率的かつコスト効果の高い方法は、すべての利用データ要件に対応し、既存の請求・収益認識システムと連携できる専用メディエーションエンジンの導入です。
予測可能性の付加
CIOが最も嫌がるのは、CFOを驚かせることです。Pay-as-you-goモデルは新製品への顧客誘導には有効ですが、より予測可能な契約条件や価格モデルを提供できなければ、競合他社に顧客を奪われる可能性があります。
従って、純粋なコンサンプション(従量課金)モデルは新規獲得には有効ですが、リカーリング型や前払いモデルを組み合わせたハイブリッド型オファリングを導入することで、顧客維持率の向上や、より予測可能で双方にメリットのある契約形態の実現につながります。

ヒント
最適なツールと戦略を導入する
特定の製品に最適な従量課金価格モデルを選定する際、Subscribed InstituteおよびBCGは、以下の要素を考慮することを推奨しています。
- マクロトレンドが市場環境に与える影響
- 他社で観察されるトレンドや成功事例
- 顧客が製品からどのように価値を引き出しているか
- ビジネスおよび製品の性質
- エンドツーエンドのコンサンプション(従量課金)モデル導入を支えるテクノロジー要件
各製品や顧客ジャーニーの段階ごとにこれらを評価することで、従量課金と他のオファリングを組み合わせたハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルにたどり着く可能性が高いでしょう。したがって、複数の価格モデルに対応可能なテクノロジーを備え、モデルの組み合わせに柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。
従量課金収益の適切かつコンプライアンスに準拠した経理・財務報告体制は整っていますか?
収益認識に関する議論は、ビジネスが従量課金価格を採用すると決めた時点で開始すべきです。コンサンプション(従量課金)モデルでは、定額料金のほか、ボリュームや階層型の割引、国や時間帯、その他多数の変数に応じて複数の単位で課金する場合もあります。こうした多様な組み合わせにより、同じサービスでも複数の価格体系が生まれる可能性があります。
導入する課金モデルは、顧客との財務的な関係を規定し、その関係を正確かつコンプライアンスに即して報告する責任が生じます。特にASC 606では、従量課金価格の運用が難しくなる場合があります。コンサンプション(従量課金)モデルでは、請求期間末に利用量を集計するだけでなく、任意の時点で顧客の利用状況をモニタリングできる詳細かつリアルタイムな可視性が求められます。
コンサンプション(従量課金)モデルを導入する場合でも、リカーリング要素を加える必要があります。これには、純粋な前払いモデル、クレジットシステム、あるいはストレージ使用量(GB)など利用指標に直接連動したシステムなどが考えられます。この段階で、顧客が前払い分を使い切らなかった場合の対応や、その差異がサブスクライバー体験にどう影響するかも検討することが重要です。
たとえば顧客が契約に基づき前払いした場合、企業として債務が発生し、契約履行責任が生じます。顧客は前払い分をいつ利用するかを決定でき、それに応じてサービスを提供し、会計上も報告義務が発生します。
顧客ごとに消化ペースが異なるため、獲得収益と繰延収益の追跡・報告にはさらなる複雑性が加わります。
これは、利用可能性に基づく前払いモデルとは異なります。たとえば、SaaSサブスクリプション企業は、1席分を1年間分まとめて請求し、毎月回収する場合がありますが、顧客がその席をいつ・どのように利用しても、サービスの利用可能性を提供する義務だけが発生し、収益には影響しません。
しかし従量課金の場合は、サービス提供のためだけでなく、収益の追跡のためにも利用状況の把握が不可欠となります。

ヒント
手作業とリスクを減らすため自動化を強化
事業部門と連携し、成長を促進する最適な従量課金方程式を見つけるとともに、ASC 606に準拠した収益認識ルールを守りましょう。
リアルタイム分析やクローズプロセスダッシュボードを備えたソリューションを導入することで、当月のオープン期間における経理・財務データのハイレベルな把握、データ問題の特定、収益エラーの軽減、月中での調整によるリアルタイムなGAAP収益報告が可能となります。
従量課金価格は貴社のGo-to-Market戦略にどのような影響を与えますか?
従量課金価格を導入する場合、単に顧客を獲得するだけでなく、顧客に製品を実際に利用してもらうことを重視した営業モデルが必要となります。
従来型の営業では、製品納品と同時に営業担当の役割は終了します。サブスクリプションモデルでは、営業は契約締結後、1~2年後の更新時期まで表舞台から離れます。
一方、従量課金価格を導入する場合は、顧客が自社ウェブサイトで製品を試用できるセルフサービスタイプの提供など、顧客主体での利用を促進する営業モデルが求められます。
こうした環境下では、営業担当は顧客の利用拡大を支援するため、カスタマージャーニー全体を通して継続的に関与する必要があります。
多くの企業では、営業担当が前払いの大型契約を獲得するだけでなく、顧客の利用実績に応じた報酬体系へとインセンティブプランを見直しています。営業担当が顧客の利用実績を確認し、購入分をすべて使い切った場合にのみフルコミッションを得られる仕組みです。
このようなGo-to-Market戦略の変化は、AE(アカウントエグゼクティブ)とSE(セールスエンジニア)の比率や、営業を支える他のテクニカルロール、パートナーとの連携方法にも影響を与えます。
多くの企業は、プロダクト主導成長の立ち上げに注力する専任チームから従量課金の取り組みを開始します。製品のセルフサービス化や、どのコンサンプション(従量課金)モデルが顧客をテスト利用に導けるかを模索します。
そして、プロダクト主導成長にシフトし、一定の成果が得られた後は、顧客に前払い型リカーリング契約へのコミットメントを促す第2段階へと進みます。

ヒント
従量課金オペレーションを支える体制を構築する
従量課金会計成功のポイント
今すぐ従量課金導入の計画を始めましょう
貴社ではまだ従量課金の導入を検討していないかもしれませんが、想像以上に早く必要となる可能性があります。ますます多くの企業が、複数の価格モデルの中に何らかの従量課金要素を取り入れるようになっています。
しかし、従量課金価格戦略には独自の課題も伴います。収益会計担当者の4分の3以上(76%)が、新たなGo-to-Marketモデルや製品、価格設定への対応プレッシャーの高まりを実感しています。従量課金導入は、収益認識の複雑性やチームへの負担をさらに増大させることになります。
収益会計チームは、新たな価格モデル導入の成否において、収益認識システムとプロセスが果たす重要な役割を事業部門に理解させるうえで、独自の立場にあります。この点については、次のセクションで詳しく解説します。
従来のバックオフィス業務から、フロントからバックエンドまでを俯瞰する包括的な視点へとシフトすることで、収益会計リーダーは、ステークホルダーに対し意思決定の下流への影響や、それが上流にどうフィードバックされるかを正しく認識させることができます。
収益リーダーはまた、価格設定構造を最適化し、収益予測性を高めつつ業務負担を軽減する方法について助言することも可能です。後述の通り、最も成功している従量課金ビジネスは、複数の価格モデルと一定レベルのコミットメントを組み合わせ、顧客の柔軟性と企業の予測可能性のバランスを図っています。
ただし、収益会計部門は営業部門側で適切なプロセスが整備され、顧客が最初から適切なベースプランを購入できるようになっていることも確認する必要があります。そうでなければ、収益チームが契約価値(ベースバリュー+想定利用分)の見積もりと定期的な見直しを求められることになります。
既存のビジネスユースケースを活用した利用収益の予測
利用予測により、収益チームは従量課金価格モデルによる収益がどれだけ得られるかを見積もることができます。これは、利用量、顧客生涯価値(CLV)、潜在的な超過料金などの変数を予測することを意味します。異なるバンドルやオファーを導入し始めると、さらに複雑さが増します。
コンサンプション(従量課金)モデルの魅力の一つは、顧客が製品やサービスの利用量、ひいては請求額を柔軟に変えられる点ですが、その反面、収益の予測性や見通しが不安定になる場合があります。
多くの場合、利用予測に特有の課題や落とし穴は、会計部門が利用収益を認識する段階になって初めて顕在化します。たとえば、FP&Aや営業オペレーション部門が、利用データや契約に必要なGAAP準拠の複雑な収益会計ポリシーを考慮せずに独自の利用予測を作成してしまうと、OTCプロセス全体で大きな予測乖離が生じ、煩雑な照合作業が必要になることもあります。
これを回避するためにも、収益会計部門は組織内の部門横断的な連携や、新たなユースケースに対する事業方針の整合を促進すべきです。上流データの複数の側面を迅速に把握・分析できるテクノロジーを選定し、課題を迅速に特定・解決しましょう。さらに、リアルタイムの照合やクローズプロセスダッシュボードを活用することで、収益予測の可視性と精度を高めることができます。
部門横断的なデータ収集・分析の整合を推進する
リアルタイムの利用データ可視化と分析は、収益予測に不可欠です。しかし、組織全体で利用データの処理やフローに関して部門横断的な整合を図ることは非常に困難です。IT、営業、請求、会計、その他のチームを含む複数のステークホルダーが、データの収集、メータリング、保存方法について合意する必要があります。
適切な関係者と連携することで、収益会計チームは全社的な取り組みを主導し、不要なデータサイロを排除してシステム統合を推進できます。事前にプロセスマップを作成することで、プロビジョニングから請求、収益認識、予測、コミッション、その他のコスト計算に至るまで、データフロー上のあらゆる潜在的なエラーポイントを特定できます。
手作業で利用収益認識を行っている企業は、この複雑なプロセスに伴うリスクとコストの増大をすぐに実感するでしょう。データの収集から収益認識まで、あらゆるステップで利用データを処理し、プロセスを自動化できるテクノロジーを選定してください。
収益認識のコンプライアンスと関連コストを維持する
すべての収益会計チームはASC 606やIFRS15に精通していますが、経営層はこれらの基準が従量課金型価格モデルに与える影響について十分に考慮していない場合があります。
従量課金契約自体は比較的シンプルですが、競争力維持や顧客ロイヤルティ向上のためには、割引やバンドルを導入し始める必要が出てきます。さらに、予測可能性向上のために、一定レベルの顧客コミットメントを導入するケースも増えています。
収益チームは、これらのプロセスをスプレッドシートで開始し、Excelに手作業で利用データを入力することが多いですが、手作業やデータのサイロ化は業務負荷・エラー・クローズまでの時間を増大させます。
加えて、正確なレポートや予測の作成、新規契約や変更への対応も極めて困難になります。多くの企業が人員増で対応しようとしますが、コスト増を招くだけで根本的なプロセス課題は解決しません。複雑な従量課金収益認識を処理できるシステムがなければ、収益会計チームは数千行にも及ぶスプレッドシート上でデータ加工を強いられることになります。
データの手動抽出・加工や、月末の締め作業のために深夜まで残業することが常態化すると、人為的ミスのリスクが高まり、結果的にプロセス障害が発生します。実際、収益会計担当者の65%が、既存の手作業プロセスや統制リスクによる誤記載リスクを懸念しています。
手作業による利用収益認識と監査人による審査の強化は、監査対応に多大な時間とコストを要する要因となります。監査人が数千行の利用データを精査せざるを得なくなるからです。IPOを目指す企業の場合、監査過程での問題発覚が上場延期につながるリスクもあります。
収益自動化は、人手を介さないデータ管理によりエラー・リスク・監査コストを削減します。The New York Timesのような企業は、何百万もの顧客の利用データを管理するために収益自動化の力を活用しています。契約変更や新オファーの展開まで、あらゆるコンサンプション(従量課金)モデルの運用をスケールに応じて自動化できるシステムが求められます。
収益認識を自動化し、プロセスを効率化する
従量課金におけるデータ管理には、データの追跡、利用量の計測、過去の収益傾向の分析など、複数のツールが必要となる場合があります。
ERPによるある程度の自動化だけでは十分でないケースも多く、従来のシステムは従量課金を前提に設計されていません。ERPソリューションは依然として一時的なプロダクト料金の処理を基盤としているため、コンサンプション(従量課金)モデルへの完全対応には多大なカスタマイズが必要です。カスタマイズを行っても、収益会計担当者の60%がERP収益モジュールが自社のビジネス要件を完全には満たしていないと回答しています。
また、コンサンプション(従量課金)モデルには、請求期間末の利用量集計だけでなく、任意のタイミングで顧客利用をモニタリングできる詳細かつリアルタイムな可視性が求められます。ERP改修に費やす時間やコストが、新たなビジネスモデルの推進を妨げることもあります。
自動化が不足している現状は、既に収益会計チームの大きな負担となっており、68%がビジネスの拡大ニーズに対応するための適切なテクノロジーがないと回答しています。必要なテクノロジーがないまま新たなコンサンプション(従量課金)モデルを導入すれば、こうした課題はさらに深刻化します。
自動化された連携で収益データを一元化することで、手作業で更新・連携が必要なスプレッドシートの乱立を解消できます。時間のかかる低付加価値な手作業を大幅に削減することで、決算業務の効率化やコスト削減、戦略的タスクへのシフトが実現します。多くのチームが、決算までの期間短縮や残業削減、より高度な業務へのリソース集中といった効果を実感しています。
特に従量課金を導入する企業では、ERPによる収益認識管理から脱却し、専門的な収益サブレジャーソリューションを選択するケースが増えています。これらは収益サブレジャーとして機能し、データを直接ERPの総勘定元帳に連携できます。
こうしたポイントソリューションの利点は、SSP分析、契約変更、収益分析など、従量課金収益会計に不可欠な機能を高額・複雑なカスタマイズなしでネイティブに提供できる点です。
経営層の理解と合意を得る
収益会計担当者の79%がより高度な自動化の必要性を認識している一方で、67%がこれら新ソリューションの導入にあたり経営層の合意を得るのに苦労していると回答しています。
CFOをはじめとする経理・財務責任者が多様な役割を担っている現状を踏まえれば、特にコンサンプション(従量課金)モデルに関する収益プロセスの細部まで十分に把握できていない場合があるのも不思議ではありません。現行プロセス・リスク・新たなGo-to-Market戦略導入の影響について経営層の理解を深めることで、自動化のビジネスケースを明確にできます。また、ファイナンス責任者にエンドツーエンド収益自動化のメリットや、何もしなかった場合のコストを教育することも、収益リーダーの説得材料となります。
基本的なコンサンプション(従量課金)モデルを超えて拡張する
従来の従量課金型価格戦略(Pay-as-you-goや超過課金など)は、顧客に求められる柔軟性を提供するうえで優れていますが、必ずしも企業側で効果的に活用されているとは限りません。現実には、こうしたコンサンプション(従量課金)モデルのみを単独で運用すると、サブスクリプション企業が慣れ親しんできた収益予測性が損なわれるリスクがあります。
Subscribed InstituteとBoston Consulting Group(BCG)の調査によれば、後払い型と前払い型を組み合わせたハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルを活用している企業は、年間経常収益(ARR)の前年比成長率において、他のビジネスを大きく上回っています。
要するに、こうした企業はシンプルな従量課金制と、その他のリカーリング課金モデルを組み合わせることで、顧客コミットメントの向上、予測精度の強化、リカーリング収益源の追加という成長ポテンシャルを引き出しています。実際には、従来型のPay-as-you-goモデルに、前払いと超過課金を組み合わせたものが例として挙げられます。
関連リソース
コンサンプション(従量課金)モデルがビジネスの成功に貢献する方法
従量課金型価格モデルを導入・拡大するための実証済みの戦略とツールをご紹介します。当社の調査によれば、ハイブリッドモデルを活用しているSaaS企業は、継続的な成長において他のすべてのビジネスを凌駕しています。
あらゆる角度から従量課金を考察する
従量課金価格の導入は、独自のメリットと課題をもたらします。本章では、これらのモデルの詳細を掘り下げ、長所と短所を明らかにするとともに、実践的なソリューションもご紹介します。
コンサンプション(従量課金)モデルの利点は何ですか?
従来以上に多くの消費者や企業が従量課金制による価格設定・請求を経験しており、そのニーズは高まり続けています。実際、過去3年間でハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデル導入が大幅に増加しています。
ここでは、従量課金型価格モデルを導入する主な利点をいくつかご紹介します。
顧客中心のアプローチ
コンサンプション(従量課金)モデルは、定額制やパッケージ料金を一方的に押し付けるのではなく、顧客のニーズや利用実態に直接連動した価値を提供することに注力しています。利用データから顧客の行動や嗜好を把握できるため、各顧客のニーズに合わせたアップグレードや追加サービスを提案しやすくなり、提供価値の向上や市場における差別化が可能となります。
この価格モデルは、スタートアップから大企業まで幅広い顧客層に対応でき、利用規模に応じたプランを柔軟に提供できます。
差別化されたバリュープロポジション
適切なバリューメトリクスを設定し、従量課金の比率を最適化することで、競合との差別化や強力なバリュープロポジションの構築が可能になります。また、コンサンプション(従量課金)モデルは市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応でき、価格戦略の大幅な見直しを必要としません。
最近のSubscribed Instituteの調査でも、コンサンプション(従量課金)モデルを採用するSaaS企業が、非従量課金企業に比べて長期的な収益成長で優位を維持していることが示されています。
柔軟かつスケーラブルな成長
参入障壁が低いため、顧客は小規模から利用を始め、製品の有用性を実感した上で、最適なタイミングでより充実したパッケージへの切り替えを検討できます。顧客ニーズが高まれば、企業側も柔軟にリソースを増強し、より高い消費需要に対応できます。
可視性とコントロール
顧客はリアルタイムの利用状況の可視化を重視しており、日々の進捗確認や超過予測、請求内容の把握が可能です。適切なテクノロジーを導入すれば、しきい値通知の自動配信や利用・支出の自己管理も容易となり、顧客満足度の向上につながります。
利用予測機能を活用すれば、高利用顧客の行動を分析し、拡大の機会を早期に把握することも可能です。
予測可能な収益源
コンサンプション(従量課金)モデルは一般的に実利用に基づく変動コストが発生しますが、顧客の支出習慣にあらかじめコミットメントを課すことで、予測可能性を付加できます。こうしたハイブリッドコンサンプション(従量課金)モデルは、企業規模を問わず年間経常収益(ARR)の成長率向上にも寄与します。
このアプローチは「コミットメント利用」や「前払い従量課金」と呼ばれ、AI・生成AI関連事業の新規参入企業においても、成長と収益性を両立するモデルとして急速に普及しています。
コンサンプション(従量課金)モデルの課題は何ですか?
従量課金型価格戦略の導入には、さまざまな課題も伴います。企業は価値提供とコスト回収のバランスを取りながら、十分なキャッシュを確保する必要があります。価格を高く設定しすぎると一部の顧客が離れ、低すぎると損失につながります。
従量課金制の導入には、潜在的なリスクや課題を十分に計画・考慮する必要があります。
予期せぬ超過請求やサービス停止
予想外の出来事は顧客体験を大きく損ないます。そのため、顧客はシンプルな従量課金請求を好まない傾向があります。必要な予測性が確保できず、利用量を把握できない場合があるためです。
解決策は透明性とメディエーションです。顧客は自らの消費パターンを常に把握できる必要があります。これが実現できれば、顧客体験が向上するだけでなく、成長の重要なレバーにもなります。
顧客の過剰コミットメント
コンサンプション(従量課金)モデルでは、顧客が過剰にコミットあるいは前払いしすぎる状況が生じる場合があります。事業者は、既に支払われた余剰クレジットや資金、利用単位の取り扱いをどうするか判断しなければなりません。
請求業務が大幅に複雑化
従量課金は通常、請求サイクル後に後払いで請求されます。これは、従来前払い請求が主流だった場合、請求チームの業務内容が大きく変わることを意味します。
この新しいプロセスでは、請求チームは正確な課金計算、請求書の適時発行、コンサンプション(従量課金)モデル以外の顧客への対応など、多様な業務を同時に管理する必要があります。そのため、正確な請求データを集めるために複数のシステムを使い分ける必要が生じることも珍しくありません。
請求オペレーションの役割拡大
従来のサブスクリプションモデルでは、顧客が契約にサインして請求書を支払えば、追加席数をめぐる争いは基本的に発生しません。条件や日割計算について異議が出ることはあっても、それ以上には発展しません。
一方、利用量に連動するコンサンプション(従量課金)モデルでは、請求ミスや不明瞭な計算をきっかけに、顧客体験の悪化やサポート対応の増加につながる多くのリスクがあります。Billing Opsは、取引支援や請求精度だけでなく、予測、通知、異議対応力の強化まで役割を拡張する必要があります。
収益認識・報告がモデルの成否を左右
ASC606やIFRS15のもとでは、会計チームが遵守すべき収益認識のルールがあります。複雑な従量課金収益認識に対応するシステムがなければ、手作業で数十万行に及ぶスプレッドシートの突き合わせが必要となり、運用負荷が急増します。
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利用状況を正確に収集・メータリングする
エンジニアリングチームは、利用メータリングの構築ではなく、本来の製品開発に時間を費やすべきです。
プロダクトチームに、利用状況のメータリングを自由に設計できる柔軟性を与えましょう。エンジニアがメータリング機能の開発や改修、あるいは顧客ごとの異議対応に毎回リソースを割かれることがないようにすることが重要です。
Zuoraは利用データの管理を容易にします
一部のベンダーは基本的な利用メータリングしか提供していませんが、真のエンドツーエンドソリューションであれば、利用データの収集・変換・計測に必要なすべてのツールを備えています。
Zuoraの包括的なソリューションなら、次のことが容易に実現できます。
- あらゆる場所から利用データを取り込む:事前構築済みコネクタを利用し、AWS、Snowflake、Kafka、またはストリーミングAPI経由で利用データを収集
- 大規模な利用量にも対応:秒間20万件以上のイベントにスケール可能
- 複数指標の追跡:顧客がどこで最も価値を得ているかを把握できる
- ドラッグ&ドロップ式メータリングデザイナーの活用:利用データの拡充・集約・重複排除・マッピング・フィルタリングが容易
- 独自コードによるメーター作成:すべてのメーターに独自ロジックを追加・拡張可能
リアルタイムの可視化・レーティング・分析を実現
予想外の出来事は顧客体験を大きく損ないます。コンサンプション(従量課金)モデルの特性上、顧客は自分がどれだけ利用しているかを把握できていない場合があります。
解決策は「透明性」です。顧客は常に自身の消費パターンを把握できる必要があります。これが実現できれば、顧客体験の向上のみならず、成長の重要なレバーにもなります。
リアルタイムの利用レーティングと可視化
顧客は、自分が何に対して支払っているのか、どれだけ利用したのか、利用パターンがどうなっているのかを可視化したいと考えています。そのためには、リアルタイムでのレーティングが不可欠です。
Zuoraは、貴社のビジネスに必要な利用ソリューションを提供し、以下を実現します。
- 利用データの自動処理とレーティング:ほぼリアルタイムでデータを処理・評価
- 顧客への超過通知:しきい値到達時や利用追加が必要なタイミングでプッシュ通知を送信
- Billing Opsチームの支援:顧客からの異議申し立てに先手を打てる体制を構築
- 毎回正確な請求書発行:イベント発生から請求書反映まで、利用履歴を完全にトレースできる監査証跡を提供
あらゆるコンサンプション(従量課金)モデルに対応した価格設定・請求を実現
新しい製品を追加しますか?それとも価格設定をコンサンプション(従量課金)モデルに変更しますか?これは大きな決断であり、対応が遅れれば競合他社に追いつかれるリスクがあります。
先進的なSaaS企業は、Zuoraを活用して迅速にコンサンプション(従量課金)モデルを価格体系に組み込み、総合的なマネタイズを推進しています。
複数モデルへの標準対応
Zuora Billingなら、従量課金の立ち上げもすぐに開始できます。
- 50以上の標準搭載価格モデルから選択可能:Pay-as-you-go、ミニマムコミット、前払い消化型など多彩なモデルに対応
- 柔軟な価格設定ツールと直感的なインターフェース:価格設定やパッケージング戦略の微調整が迅速かつ簡単に実現
- 同じ利用データに複数プランを適用:自社ビジネスに最適なプランを比較・選定可能
- 価格の自動更新:アプリ内課金、eコマース、CPQなど複数システムへ自動反映
利用収益を最大化する
生成AIの収益化や導入障壁の低減といったトレンドを背景に、多くの企業が成長促進のためにコンサンプション(従量課金)モデルを採用しています。しかし、従量課金型価格モデルを全社的に成功裏に展開するためには、収益会計チームに最適なツールを提供し、万全の体制を整えることが不可欠です。
利用収益を継続的に認識する
Zuora Revenueを使えば、次のことが簡単に実現できます。
- 自動レポートで不一致を迅速に特定
- スプレッドシートや複数システム間の数値照合にかかる時間を削減
- 現在の収益状況をほぼリアルタイムで把握し、経理・財務チームが決算業務に集中できる環境を実現
- 新たな従量課金型オファーも収益認識ルールに準拠して管理
- 実績収益と予測収益を比較し、データに基づく意思決定を推進
次のステップへ進む
今後も従量課金型価格モデルは、あらゆる業界の企業にとって不可欠なツールであり続けるでしょう。このモデルは、スケーラビリティ、透明性、コスト効率の高いアプローチを提供し、事業者とユーザー双方にメリットをもたらすとともに、現代ビジネスのダイナミックな変化にも適合します。
従量課金の複雑性を乗り越えるためにも、トータルマネタイズ戦略を採用し、最適なソリューションを実装することで、イノベーションの推進、成長最大化、顧客関係の強化を実現しましょう。